「社会保険?」「シャホ??」
「……年金も健康保険も払ってるけど」
若い時、僕はこれでした。
みんな同じもんだと勘違いしていました。何にもわかっていなかったのです。
僕が加入していたのは、国民年金と国民健康保険。これを言葉の響きだけで社会保険と呼ばれるものなんだろうと思い込んだまま、美容師20代を過ごしていたわけです。
そもそも、社会保険というものを知ろうともしなかったし、ニュースで「厚生年金」というワードが出ても国民年金と同じ年金と思っていたし、興味すら湧かなかった。
国民年金と厚生年金は同じ年金制度ではあるが、違いがあるということを知らなかったのです。
今は、経営者としてきちんと理解しました「社会保険」
そして、美容師にとっても社会保険とは何かと絡んでくるもので、人生においても知っておくべきです。
この知ろうとしないとよくわからない社会保険を美容師にもわかりやすく、先を考える上での1つの指標となるように紹介していきます。
社会保険て何?
病気やケガ、障害、老齢介護、退職や失業などのリスクを個人で負担するのではなく、国や自治体が公的にフォローするのが社会保険制度です。
日本の社会保険制度は、
- 年金保険
- 健康保険
- 介護保険
- 労災保険
- 雇用保険
の5つに分かれていて、一般的に社会保険と呼ばれるのが1~3の年金・健康・介護保険の3つ。介護保険は40歳から健康保険と一緒に支払い始めます。
また、厚生年金と健康保険の2つを「社会保険」という認識がされていて、多くのメディアでもこの2つが主に取り上げられます。
で、ほとんどの美容師が社会保険に加入していないです。
4と5の労災・雇用保険は、労働保険と呼ばれていて労働者が加入できる保険です。
労災と雇用保険は、美容室と雇用契約を結んで働いていれば加入しているはずです。(従業員として給与を支給されている美容師)
そして、この社会保険の年金保険と健康保険には種類があり、支払う保険料や受けれる保障に違いがあります。
年金保険の種類
厚生年金と国民年金があり、簡単にいうと
- 厚生年金の方が保障が手厚く保険料は会社も半分負担してくれる
- 国民年金の方が保障は薄く保険料は全額自己負担
厚生年金の保険料は収入が上がれば高くなる。国民年金の保険料は収入に関係なく定額。
で、20歳から60歳の40年間年金を納めたときに、老後もらえる年金を美容師にもわかりやすくざっくりと計算すると、なんと倍以上の差が出る。
ざっくりとは、65歳から85歳までの20年間年金受給した場合の概算。
国民年金が1,500万くらい。厚生年金が3,900万くらい。
国民年金の方が納める保険料が少ないので仕方ないとも言える。
そして、多くの美容師が国民年金というのも事実。これが残念かどうかはなんとも言えない。(これについてはこの先で)
健康保険の種類
会社員が加入する健康保険とそうではない社会人が加入する国民健康保険がある。
- 会社員の健康保険料は会社も半分負担してくれ、各種手当が充実している
- 国民健康保険は全額自己負担で会社員の健康保険より手当などは少ないと言える
健康保険料は、どちらも収入によって変動する。
若くて健康でけっこう稼いでいる美容師さんは、以下のように感じるかも。
「年間に使う医療費の○倍以上の健康保険料だよ…高すぎ!」とか。
女性の方は、出産や育児に関わる手当は断然、会社員としての健康保険(社会保険)の方が手厚い。
そして、多くの女性美容師さんも国民健康保険というのも事実。
これについては、特に女性美容師さんは知っておくべきです。
→『【産休育休】女性美容師が絶対に知っておくべき大事なこと』
そもそも美容師は社会保険に加入してないの?
はい。多くの美容師が社会保険に加入していません。
年金と健康保険を自分で支払っているという美容師さん。社会保険未加入であり、国民年金と国民健康保険でしょう。
そして、美容師の多くが加入したくても加入できないのです。
なんで美容師は社会保険に加入できないの?
美容師が社会保険に加入できないのではなく、どういった働き方をしているのかで変わってくるのです。
美容室の多くは、個人事業主のオーナーが経営しています。
個人事業主は社会保険に加入することはできません。
そして、その美容室の従業員として働いている美容師も(基本的に)社会保険に加入できません。
※オーナーと相談次第では加入できなくもないけど、たぶん難しいでしょう。。
社会保険加入には条件があり、わかりやすいのが『株式会社(法人)が経営する美容室で社員として働く』必要があるのです。
(パートでも加入できますが条件があります)
でも注意!株式会社が経営の美容室で働いている美容師さんで業務委託契約は社員じゃないです。これは個人事業主の美容室オーナーと同じです。
なんで会社経営の美容室の社員は加入できて、個人事業主として働く美容師は加入できないの?
言ってしまえば、そういう決まりごとだからです。
簡単にいうと、
社会保険料は、会社と社員が半分づつ負担して支払うものなので、会社に属さない個人事業主の美容師には、全額自己負担の国民年金と国民健康保険(もしくは組合健保)という選択しかないのです。
個人事業主の美容師が社会保険に加入するには、
- 会社経営の美容室に就職する
- 自分で会社を作ってそこの社員(役員)となる
です。
社会保険に加入するのは美容室にとって大変なこと
2012年頃だろうか。。国が法人(株式会社)経営の美容室からの社会保険料の徴収を徹底し始めたのは。
美容業界では株式会社が経営する美容室でありながら、そこで従業員として働く美容師が社会保険未加入なのが当たり前だった時代が続いていた。
そこで、そういった美容室から社会保険料の支払い義務が強化されることとなったわけです。(今更。。今までが見逃されていただけか。。)
さぁ、大変!今いる全従業員の社会保険料の半分を会社で納めなくてはいけなくなるわけだから、経営者も焦るんです。
- 払える力がある美容室(会社)は払って、頑張って経営を続けていくことができる。
- 払えない美容室(会社)は、払ったら会社倒産するかも。
- 払えるけど払っていくには自分(経営者)の報酬を減らさないと無理かも。
- 払うにはスタッフの給与を下げないと無理があるかも。
- 払うには経営者含めスタッフ全員の給与を下げないと無理かも。
などなど、美容室の状態で様々でしょうが、それだけ社員の社会保険料を会社で負担することは簡単なことではないのです。
このような経緯もあり、業務委託サロンが増えてきたともいえます。
私にも経験あります。会社経営の美容室で社会保険未加入で社員として働いていたところ「雇用形態が変わります」という知らせ。
詳しい説明もなく個人事業主としての開業届もすでに用意してあり、「契約書にサインして」と。
よくわからずサインしたが、それは業務委託契約書でした。
簡単にいうと、まず会社をクビになり改めて個人事業主として業務委託契約して、今までとかわらずその美容室で美容師をするということ。
これは会社都合なのでクビ(解雇)となるわけです。
経営状態などはわからなくもなかったが、会社で社会保険料を負担することが難しいから、スタイリスト全員を業務委託契約としたわけ。
社員にしろ業務委託にしろ、もともと国民年金と国民健康保険だったので、社会保険未加入というとこは変わらない。
それだけ、美容室が社会保険料を国に納めるのが大変ということです。
僕も大変と感じています。
スタッフの給与も沢山あげたいし、社会保険料の負担も大きいとなると、売上が必要ですから会社としての努力が必要です。
簡単じゃないことは確かです。
美容師にとって社会保険加入は得なの?損なの?
じゃあ、社会保険に加入していない美容師は残念なのか?
経営者としてではなく、美容師個人としての僕の考えは「 得=損」 です。
どちらとも言えない。
なぜかといいますと、 これからの日本社会を美容師として生きていく時に、どんな価値観や考えを持って人生を歩んでいくのかで変わるからです。
また、美容師という職業1つで考えても、働き方が様々です。また、美容師一人ひとりで考えても家庭環境やライフプランなども人それぞれです。
ただ、一般的には厚生年金(社会保険加入)の方が国民年金より手厚く、老後の不安が軽減されるという認識であり、数字で見ても間違いではない。
とはいえ、制度内容に差があり加入条件も細かく、色々と違いがあるので必ずしも「社会保険加入が得」と感じるかどうかは、その美容師さん次第だと思います。
社会保険未加入の美容師さんは、きちんとリスクも知っておいてほしいと思います。
↓
『社会保険未加入の美容師が抱えるやば〜いリスク』
これからの日本社会で美容師としてどう生きるのか?
少子高齢化で今後も増税されていくであろう日本。年金制度も危ういと言われている。
飽和状態で競争激化の美容室。美容師の働き方が多様化し、収入格差が広がっていきそうな美容師。
このような日本で美容師を今後も続けていくと考えた時、社会保険加入が得かどうかは、自分の状況や目標と擦り合わせて答えを出すしかないと思います。
その答えが正しいかどうか、こればっかりは僕にもわかりません。
でも「わからないんじゃ、困るんだけど…」となると思うので、例えばの話をしたいと思います。
「美容師だけど社会保険なんて加入したくないよ!」という場合
- 老後の心配よりも今が大事
- 手取りが減るのはゴメン
- 自分で稼ぐ力に自信がある
とにかく「お金!先のことより今!」と考える美容師さんは、社保未加入の方がいいかもしれません。それと稼ぎ出す力がある美容師さん。
国民健康保険では病気やケガで働けない期間の生活保障はありませんので、そういったリスクにも対応できるよう、しっかり稼いで蓄えられるような美容師さんですね。
とりあえず、従業員として働くなら個人店ですかね。
社会保険加入サロンと社会保険未加入サロンでは、後者の未加入サロンの方が手取りが多いと感じます。
もしくは、業務委託美容師として働くかです。この場合は、雇用・労災保険に入れないので、リスクに対応できる力は必要です。
それと、国民年金と国民健康保険は全額自己負担となるので、美容師としてそれなりに稼げる方でないと得とは思えないかもしれません。
それと年金は自分で納めるものなので、払いたくないから払わないということも自分次第ですが、それはただの滞納となりますので注意が必要。
それなりに稼いでいて、それなりに納税していたら督促状が届くでしょう。たぶん。。
それと独立開業資金も貯めたいから、業務委託でガンガン稼ぎたいという美容師さんもきちんと納税した方がいいです。
たくさん税金を納めている
↓
それなりに収入があり実績のある美容師
↓
この人なら融資しても大丈夫だろう
こんな風に見られますし、その逆もありますから。
「社会保険加入して美容師したいよ」という場合
- 老後の不安は少しでも減らしたい
- なんかすごい長生きしちゃいそう
- お金より安定が好き
- 産休育休をしっかり取りたい
- 病気や怪我に備えながら安心して働きたい
- 扶養家族がいる(奥さんや子供)
目先のお金より安心して働きたい美容師さんは、社会保険加入で働く方が向いていると言えます。
厚生年金の方が老後の年金受給額は断然多いです。老後を考えたら社会保険は、人生の不安を軽減してくれるとも言えます。
社会保険料を納めるのは大変と言いましたが、その大変な社会保険を完備できる美容室であれば「安定」も期待できるかも。完全週休2日のとこも多いですしね。
また社会保険加入者の健康保険は、病気やケガの保障が手厚いです。
美容師だって病気やケガで仕事ができなくなる時があるかもしれません。
そんな時の生活保障があるのが社会保険です。
僕は、美容師にとってもこれが国民健康保険にはない社会保険の大きな恩恵かと思っています。
それと、奥さんや子供といった扶養者がいる場合は、美容師の旦那さんが社会保険加入していれば、奥さんと子供の保険までカバーできます。
旦那さん1人の社会保険料で家族分全員ということ(コレ、結構大きいです)
また、産休育休制度をフル活用してもらえる給付金をしっかりと受け取りたいという女性美容師さんは、絶対に社会保険の方が得。
(→『【産休育休】女性美容師が絶対に知っておくべき大事なこと』)
ただ、社会保険は払いたくないとなっても、会社の給与から強制的に徴収されていますので払うしかありません。
嫌になったら退職して国民年金と国民健康保険に加入です。
結局のところ僕は社会保険加入をオススメします
だから、会社経営の美容室で社員として美容師を募集しているのです。
「社会保険なんて加入する必要ないよ」と思えば、社会保険に強制加入の美容室を作りません。
作ったとしても社員として募集せず、業務委託として募集するかもしれません。
やっぱり美容師にも社会保険が必要と感じたから会社にしたわけです。
社会保険料の支払い?
う〜ん、大変ですよ。
でも大変なのは本当はそこじゃなくて、それ含めてどうやって会社やっていくのかなんです。
別に払えなくないです、社会保険料。
広告費や材料費を見直すなり、自分(経営者)の報酬を下げるなり、経費を見直してみればいい。
なんとかなるというより、なんとかするしかないのです
うちの会社でいえば、経営者の報酬をギリギリまで下げる。社員より下げる。それで、今はいいという考えです。まだまだこれからの会社ですから。
まずは、現場で働くスタッフを最優先。
その結果、会社の力が強くなったら自分も少しづつ社員と同じように報酬が取れればいい。
ただ、それだけ。社会保険料もなんとかなっている。
なんともならない状態なら、それは社会保険料を払う払えないの問題ではなく、社会保険加入とかそれ以前にすでにヤバイ状態なのかもしれません。
美容師として働くスタッフに社会保険がもたらしてくれるものが大事
僕もずっと国民年金と国民健康保険で、会社作って初めて社会保険に加入したわけですけど。
正直、加入してすぐに何かが変わると実感するものではありません。
加入前と変わったことといえば、
- 保険料を会社が半分負担してくれてラッキー
- 老後もらえる年金が増えるからちょっと嬉しい
- 病気やケガは気をつけるけど「もしもの時」の休業補償があるのは助かる
ということで、今、現状という中での恩恵を受けているわけではないので、ちょっと老後の不安が減ってるのかな〜という感じで、今が変わったわけではないのです。
社会保険に限らず「保険」てそういうものです。
未来に備える。
美容師人生で何があるかなんてわかりません。
何かあった時の備えが無くては安心して仕事をするのは難しいと考えます。
「安心して働く」「不安を減らして仕事する」
これからの美容師にも社会保険加入は必要と考えます。
